2025年度 北海道地区協議会 会長基本方針

公益社団法人日本青年会議所 北海道地区協議会
会長基本方針

2025年度 会長 鈴木 裕輔(一般社団法人 白老青年会議所)

1.初めに

 青年会議所は、戦後間もない1949年に「新日本の再建は我々青年の仕事である。」と設立趣意書に掲げた東京の青年有志から始まって以来、長きにわたり全国各地にその根をのばしながら、広く世界と繋がり、「個人の修練、社会への奉仕、世界との友情」を信条として今日に至るまで各地で運動を起こしてきました。

青年会議所運動を起こすための私たちの活動は、愛する故郷への気持ちを呼び覚まし、自己成長のあらゆる機会を与え続けてくれます。親会を設置せず、自らの会費によって社会をより良くするために活動できる組織は青年会議所しかないと私は確信していますが、多様性という曖昧な言葉が先行し、青年会議所においても多様性と正面から向き合わなくてはならない過渡期を迎えています。

時代に即して組織改革を行う必要もあるでしょう。しかし、私たちは青年会議所の「原点」を改めて理解する必要があります。東京青年会議所の初代理事長である三輪善兵衛先輩が、青年会議所は「家族・会社・地域を良くしたいという青年が集まった」と話されています。この考えを「原点」とするならば、今も昔もやることに何も変わりはないのではないでしょうか。

私たちは、「原点」を正しく理解したうえで、紡がれてきた素晴らしい組織を継承し、より良い組織へと変えて次代にバトンを渡す必要があります。全国的な会員数の減少によって、経験年数が低下し、LOMの組織運営が苦しくなっています。だからこそ、今、私たちが時代と向き合い、新たな時代を創らなければならないのです。

私は、道内全てのLOM、そして全てのメンバーと共に覚悟をもって北海道の新しい時代を築きたいと考えています。私たちになら、必ずできます。

世の中に蔓延した「できない」という思い込みを「できる」という希望に変える

夢と希望に満ちた、僕らの創る未来へ さあ、熱狂しよう

2.未来のために

 北海道は日本の最北に位置し、豊富な資源に恵まれており、国内外問わず人気の地域です。しかし、その一方で我が国の最東端に位置する北方領土は、いまだロシアに不法占拠されており、自由に行き来することができない状況が続いております。昨年に至るまで55次に渡り、日本JC主催にて北方領土現地視察大会が開催されましたが、現時点では返還の兆しは見えておりません。

ロシアとの交渉は政治的な課題ですが、私たちの運動が世論を動かし、道民が先導者となることで、領土返還の日を導くことが可能です。今年も強い気持ちを持って北方領土返還要求運動を展開し、地域の一体感を高めることが重要です。私たちの声が一つになれば、前進する力となり、より多くの人々にこの問題への理解と関心を広げることができると確信しています。

また、2025年は戦後80年という大きな節目を迎えます。この80年間、日本は戦争の傷跡を乗り越え、平和と繁栄を築いてきましたが、北海道もまたその歴史の中で特別な役割を果たしてきました。北海道は、戦時中に戦略的な拠点として重要視され、多くの人々がその影響を受けました。

私たちの地域には、戦争の記憶やその影響を受けた多くの遺族や証言者がいます。その声に耳を傾けることは、私たちが未来を考えるうえで不可欠です。私たちは、北海道の歴史を振り返り、戦争の教訓を地域の未来にいかすための取り組みを進める必要があります。地域の歴史を学び、平和の大切さを次の世代に伝えていくことが今を生きる私たちの使命です。

3.誇り高き故郷の創生へ

青年会議所は、地域課題と向き合い、全国各地で様々な運動を起こしてきました。今や当たり前に紡がれている「手を挙げて横断歩道を渡りましょう」という行為は、私たち青年会議所の事業から生まれた交通安全運動です。しかし、青年会議所が起こした運動から生まれた行為だと知っている人は、おそらく限りなくゼロに近いのではないでしょうか。

全国的に会員数の減少が進んでいます。入会対象者にアプローチをかけることはもちろん継続する必要がありますが、同時に入会対象者をはじめとして、多くの人々が「手を挙げて横断歩道を渡りましょう」の行為のように、賛同したくなるような魅力を持ち、真に求められた青年会議所運動の展開が不可欠であると私は思っています。それこそが入会への最大の広報でもあります。

「JCは広報が下手くそである」とよく言われますが、この課題に対しても、時代を先行してきた組織のプライドをもって、今、向き合わなければ解決に至ることは今後もありません。「北海道地区協議会の広報を真似したい」を目標に広報システムの確立を目指す必要があるのです。

北海道地区協議会は2012年に「JCフォーラム」を創設し、2024年の「JCフェスティバル」に至るまで、当年事業の方向性を発信する事業を実施してきました。この事業は、道民と直接関わりをもって運動発信できる最大のチャンスです。

私たちは青年会議所という組織として、時代に先行し、数年後を見据えた運動を起こし続けなくてはいけません。愛する北海道を、全ての人が誇れる故郷へと創生する。そのために、2025年度も新しい発信方法を模索し、過去を超えていく取り組みが必要なのです。

4.故郷を守り抜く

 2018年9月6日午前3時7分に北海道胆振束部地震が発災し、最大震度7を記録する大規模な地震により44名の尊い命が失われ、785名の負傷者が出ました。地震発生直後から全道的に停電が発生し、人々は情報収集ができないまま余震への不安を募らせました。

 日本は、外国に比べて台風、大雨、大雪、洪水、土砂災害、地震、津波、火山噴火などの自然災害が発生しやすい国土であり、自然は時として猛威を振るいますが、正しく知り、正しく備えれば、被害を最小限に抑えることができるはずです。

情報化社会といわれる近年では、災害速報による避難指示や今後起こると予測される災害予想などがあらかじめ周知され、以前よりも備えに対する理解も深まってきたと感じています。しかし、実際に災害が発生した時に冷静な判断ができず、誤った咄嗟の行動を取ってしまうと、二次災害を引き起こす危険があります。混乱した状況下でこそ、的確な判断が求められるのです。

 このため、正確な状況把握と危機管理能力を持ったリーダーの育成が急務です。そして、私たち青年会議所は、既に持っている災害ネットワークを活用し、地域を守るための備えを整えることが必要です。これにより、地域社会の信頼を築き、災害時にも安心して生活できる環境を提供することができると考えています。私たち一人ひとりの故郷を守り抜く覚悟と行動が、未来の安全を創るのです。

5.特別な地区大会を

道民はもちろんのこと、開催地域の行政、企業、市民を巻き込み、1年間展開してきた運動の成果発信、つまりは北海道地区協議会の集大成として開催されてきた北海道地区大会は、本年で74回目の開催となります。

私は入会年度の2012年に初めて地区大会に参加しました。第61回北海道地区大会稚内大会です。全道各地のメンバーが開催地域に集い、数日にわたりフォーラムや大会式典が行われました。それだけでなく、地域に還元する活動が展開される様子を見て、当時の私は新入会員として青年会議所が持つ力に感動しました。

地区大会を体験することで、自分の地域でも同じようなことができるのではないかと感じ、あの人が頑張っているなら自分も頑張らなければならないと強く刺激を受けたことは、昨日のことのように思い出します。北海道地区協議会が実施してきた地区大会には、人の価値観を変える力があるのです。

2024年、私は北海道ブロック協議会会長として、全国各地の地区協議会会長やブロック協議会会長と多くの対話を重ねる機会がありました。その中で、地区大会のあり方について全地区の調査を行った結果、全国大会と同様の規模で数日間実施する地区は皆無であることがわかりました。これは、北海道地区協議会の地区大会が特別である証です。

特別であり、人の価値観を変える力を持つ素晴らしい地区大会を、もっと多くの人に体験してほしいと心から思います。青年会議所は単年度制であるため、運動の成果や得られたネットワークを翌年度以降に引き継いでいくことが非常に重要です。誰にでも挑戦できる地区大会を残すこと、そして誰もが夢と希望に熱狂できる地区大会を創りあげましょう。

5.新しい協議会へ

 日本JCの定款第3条には、「本会は、日本国内に所在する青年会議所を総合調整してその意見を代表し、全国的規模の運動を展開して、日本国民、青年会議所及び青年会議所の正会員の利益の増進を図るとともに、国際青年会議所と協調して世界の繁栄と平和に寄与することを目的とし、本定款第5条に定める事業を実施する。」という目的が記載されています。

北海道は、1地区1ブロック4エリア制にて活動を行ってきました。この制度によって、生まれた強い組織やリーダー、各地に根差した運動が数多くありました。しかし、総合調整機関としての機能を果たすには難しい場面が多く、近年ではLOM支援において移動距離や協議会に対する支援LOM数の増加が課題となり、支援しきれない現状が続いていました。

そんな中、2023年度より2ブロック移行の検討が進み、2024年度10月の日本JC総会にて、連絡調整機関としてLOMへ最大限の有益な役割を果たすため、東北海道ブロック協議会と西北海道ブロック協議会の設立が承認され、2つの新たな協議会が誕生しました。

北海道では地区協議会とブロック協議会の役割が複雑化し、すみ分けができていない現状がありましたが、2つのブロック協議会が誕生することで、会員拡大や各種JCプログラムの活用推進、地域の課題に対する運動支援、災害支援策など、LOMに最も身近な日本JCとしての役割を果たすことが可能になります。これにより、LOMの活動や運動を最大化し、様々な問題によって生じる可能性のあるLOMの存続問題にも早期に取り組むことができるようになります。

北海道地区協議会は200名を超える出向者によって構成されていましたが、ブロック協議会の誕生に伴い、2025年から出向者の数は縮小されることになります。この変化は、組織の効率化を図るための一歩ですが、地域課題を解決するための運動は一切縮小することはありません。むしろ、私たちは地域のニーズに応えるために、さらなる努力を重ねていくべきです。また、北海道地区協議会は、新たに誕生するブロック協議会を支援し、総合調整を行う必要があります。この新しい体制のもとで、より効果的な活動を展開し、各地域の特性に応じた運動を推進することが求められています。ブロック協議会が誕生することで、私たちの活動がより広がり、各地の声をしっかりと反映できる体制が整います。

私たち一人ひとりが主体となり、道内各地で多くの運動を生み出し、地域の発展に寄与していくことが大切です。新たな時代を託された運命的なこの瞬間を共に歩みましょう。

6.より強い組織へ

2024年1月1日に令和6年能登半島地震が発災しましたが、日本JCは、発災当日に災害対策本部を設置するとともに、国土強靭化委員会メンバーが現地入りし、全国災害ボランティア支援団体ネットワークや全国社会福祉協議会と情報共有しながら、支援体制の構築を図り、地区協議会、ブロック協議会、被災地LOMと連携しながら、災害支援を行いました。

この災害に対して、最初に行動を起こしたのは青年会議所でした。私たちが所属する青年会議所は、地域のリーダーシップを担い、地域貢献や社会問題への取り組みを行う重要な組織です。そして、私たちの活動は、地域の課題解決や災害支援など、多岐にわたります。「青年会議所もある時代」と耳にすることがありますが、本当にそうでしょうか。私は、今でも、国や地域のために「無償の愛」をもって行動できる組織は他にないと強く感じています。

青年会議所は発足以来、単年度制として毎年新たなリーダーを生み出し続けてきました。しかし、今は時代の過渡期にあり、会員数の減少や平均在籍年数の低下により、なかなか理念が浸透せず組織のあり方と向き合うべき時を迎えています。改めて「原点」を正しく理解し、青年会議所運動の本質を変えずに、すべてのメンバーが「家族・会社・地域のために」と誇れる組織を目指す必要があります。

そのうえで、組織の基盤となるのが運営管理です。北海道地区協議会は、LOMの信頼と負託、社会の信用によって成り立っています。強いガバナンスをもったうえで、社会責任を果たしていく必要があり、運動の根幹にかかわるコンプライアンスや財政面強化、それによって運動のブランドをさらに高めていくことが組織の存続にとって必要不可欠なのです。

7.最後に

 北海道地区協議会は、今日に至るまで73年間の歴史を紡いできました。この長い道のりの中で、多くの先達が築いてきた基盤と精神を受け継ぐ私たちには、過去を超え、新たな時代を創り出す義務があります。

青年会議所の「原点」を正しく理解し、手法に捉われることなく、新たな時代を創りましょう。そして、青年会議所という最高の組織を、最高の状態で、次代に紡ぎましょう。 私たちになら、必ずできます。

世の中に蔓延した「できない」という思い込みを「できる」という希望に変える

夢と希望に満ちた、僕らの創る未来へ さあ、熱狂しよう