会長基本方針

公益社団法人日本青年会議所 北海道地区協議会
会長基本方針

2024年度 会頭 土橋  広侑(一般社団法人 斜里青年会議所)

【はじめに】

「失敗することを恐れるより、何もしないことを恐れろ」

日本を代表する企業である本田技研工業の創業者である本田 宗一郎氏の言葉です。この言葉は、私たちに向かうべき道を示し、勇気を与えてくれます。新しい挑戦に立ち向かう時、失敗の可能性を恐れるのは自然なことであります。しかし、失敗から逃げることは自己成長の可能性を閉じることになります。

私は青年会議所の最大の魅力は、「修練」「奉仕」「友情」という三信条のもと、志を同じくするメンバーがいるからこそ、困難に直面しても立ち向かう挑戦への勇気が湧きおこり、ともに目指す目標に向かって行動できることだと考えています。この過程において、業種や職種、さらには育ってきた環境も違う様々な個性があるメンバーが真剣に議論を交わすことで、より良い結果が生まれると考えています。

そして、私はこの挑戦に捉われすぎて、大きな失敗をした経験があります。

2020年度、LOMの理事長を務めた際、大きな夢を描き、期待と希望を抱いてスタートしました。しかし、新型コロナウイルス感染症の蔓延を起因に世の中は大きく変わり、青年会議所活動にも大きな影響がありました。対面での会議はもとより、事業など人が集まることが制限される状況が起こりました。私は、大変焦り、運動を停滞させてはいけないとの思いから、当時の委員長へ行動規制のルールに従いつつ、当初の課題への事業再構築を強いました。しかしながら、当時の私の行動は、自己の価値観を押し付けるだけで、委員長への配慮が足りない利己的な行動でありました。その結果、委員長の気持ちは離れてしまい、運動が低下しました。さらに、私は焦りから自ら諦めない気持ちを見せるために議案を書き、事業を実施しましたが、担当の委員長の発展と成長の機会を奪ってしまったのです。当時の私は、自分だけの価値観で相手と対話せず、結果的に相手を追い詰めていたのです。

私はこの経験から、挑戦とともに利他の精神の大切さと必要性を学びました。行動には他者への思いやりや配慮をもち、その人の状況や幸福、利益を考える気持ちが必要であり、人間関係や社会全体の健全な機能を支える要素だと考えます。メンバー一丸となって明るい豊かな社会に向けて挑戦、行動を起こしていくには、この視点も忘れてはなりません。

私たちJAYCEEは、挑戦からの失敗を恐れず、夢を追い求め、具体的な目標をもち、メンバーや関わる人への利他の精神をもって行動に移す勇気を持ちましょう。ともに新たな挑戦に向かって歩んでいきましょう。

【北海道地方の魅力を世界へ届ける】

私は、北海道内179市町村の個性輝く資源が活用され、国内はもとより世界を魅了し、北海道経済を牽引すると考えています。

観光後進国と呼ばれる日本ではありますが、一方で、2021年ダボス会議では持続可能な観光・能力開発ランキングでは世界一位に選ばれるなど、観光資源として大きな可能性を秘めています。さらに、北海道は、地域ブランド調査2022によれば、都道府県魅力度ランキングでは14年連続の一位を誇り、国内では誰もが訪れたい地域として注目されています。しかしながら、多くの国内外からの来道者は、主に札幌、函館、小樽、富良野などに集中しており、地域の魅力の認知が偏っている状況です。

アフターコロナ時代において、道内へも観光が戻りつつある今こそ、地方の多彩な魅力を発信する絶好の機会だと捉えています。旅行形態も変化し、JTB総合研究所の調査によると、アクティビティ、自然、異文化体験の3要素が国外旅行者に求められており、道内では、欧米で求められるアクティビティが豊富に体験でき、さらには異文化においてもアイヌ文化は国内外でも珍しいユニークな先住民文化とされ、広大な大地を有する北海道は、特性は多様であり、各地域の魅力の発信または潜在的な魅力を掘り起こすことで、誰もが訪れたいと思う、憧れる北海道の創造につながると考えています。

さらに、北海道は良質な雪を有する地域として世界で認知されており、すでにニセコをはじめとして、道内各地でウインタースポーツを軸とした再開発が進んでいます。さらには、夏の避暑地としてラグビー、駅伝やアイスホッケーなど様々な大学や企業のスポーツ合宿地として北海道は選ばれています。そして、北海道の地域特性を生かしスポーツの大会が開催されれば、さらなる北海道のスポーツや自然、文化、食事、歴史を発信する貴重な機会とともに地域経済の活性化につながると考えています。

【北海道経済の再構築】

私は、北海道が世界の潮流に遅れることなく、JCメンバーや地域企業が積極的にDXやGXを推進することで、社会の変化へ適応し、活力ある地域経済を広げたいと考えています。

北海道経済は、長期にわたる新型コロナウイルス感染症の影響に加え、ウクライナ情勢に端を発した国際情勢の変化により、エネルギーや原材料の供給の動向が見通せず、経営環境は厳しい状況です。また、北海道の産業構造の課題として、公的需要への依存が高く、地域際収支において移輸入が移輸出を上回る状況であり、第2次産業の比率が低いことが挙げられます。そのような中、2023年2月最先端半導体工場の建設地として千歳市が選定され、これを契機に製造に加え、研究、人財育成などの一体となった複合拠点を形成し、ものづくり、デジタル産業の飛躍し、世界中から研究者や技術者が集うデジタル人財拠点の形成につながることが期待されています。しかしながら、そのような道内産業の構造変化が起こっているものの、道内企業を規模別で見ると全体の99.8%を中小企業が占め、人手不足や後継者難といった課題に直面しています。このような雇用の重要な役割を果たしている中小企業の経営環境は厳しく、それらの課題解決の手段としてDXに取り組むことが不可欠です。

また、ゼロカーボン北海道の実現は地球環境保護と持続可能な地域未来の確立に向けて急務です。青年会議所は、地域社会における環境問題への取り組みをリードする立場として、積極的に役割を果たすべきです。持続可能なエネルギーの転換や環境への配慮への取り組みを推進することで、地域経済の活性化や地域社会の発展に寄与できると考えています。さらに、環境への負荷を軽減するイノベーションや教育を推進することで、低炭素社会の普及を後押しすることで多くの道民に環境問題への意識を高める機会となります。地域社会や企業と連携しながら、ゼロカーボン北海道の実現に向けた運動を展開することで、持続可能な地域社会の構築に寄与し、未来の世代に美しい自然を受け継ぐ可能性を高めることが求められています。

【北方領土返還への願い】

私は、国際平和に寄与し、近隣諸国との良好な関係性を築きあげ、我が国固有の領土返還に向けてメンバーと市民が共に想いを一つにする機会が必要だと考えています。

第二次大戦末期の1945年、旧ソ連は当時まだ有効であった日ソ中立条約に違反して対日参戦し、日本がポツダム宣言を受託した後に北方四島の全てを占領しました。当時、四島全体には約1万7千人もの日本人が強制退去させられました。その後戦後78年にわたり、ロシアによる不法占領が続き、元島民も高齢化し、北方領土返還への願いが薄れています。領土問題解決に向けて粘り強く交渉を続けてきましたが、2022年2月、ロシアによる一方的なウクライナ侵攻が始まり、国際秩序の根幹を揺るがす出来事となりました。しかしながら、日本にとって海を隔てている隣国であるロシアとの北方領土問題と平和条約交渉への北海道の果たす役割は大きく、我々が率先してこの問題に取り組み、領土が返還されるその日まで運動を継続することが大切であり、さらなる大きな声となるようあらためて全道のみならず全国的な運動へと発展させていく必要があります。

また、国際社会と連携を強化するためには、積極的な国際交流を通じて、異なる文化や背景をもつこれからの未来を担う若者同士が交流し、共通の課題や目標に向けた理解と連携を深めることが必要です。国際交流は、世界の現状や課題をより正確に把握し、地域や国際社会への貢献意識を醸成され、異文化の理解を通じた対話や協力は、世界平和にも寄与されます。さらに、国際的な人脈や知識を取得することで、地域社会の未来に向けた新たな視点での事業創出の可能性が広がると考えています。

【強い北海道を目指して】

私は、誰もが安心して暮らせ、災害に見舞われても助け合える地域社会を築き、個人の生命と財産を守りたいと考えています。

北海道では、近時の気候変動の影響による事前災害が頻発、激甚化しており、災害への減災や防災対応が喫緊の課題とされています。2016年の大雨災害、2018年の胆振東部地震、2022年の暴風雪、全国的な災害が深刻な影響を地域に与えています。地震や台風などの災害に対する道民の意識が高まっており、防災・減災の取り組みがますます重要視されている中、地域へ取り組みを推進することで、国全体の国土強靭化に貢献することができます。また、今後発災が予測される首都直下地震などの備え、北海道バックアップ拠点としての役割を担っています。さらに、地方自治体との連携が重要視されており、多くの市町村が地域計画を策定されていますが、計画の実行性や平時の備えなどへの対応が十分ではありません。

青年会議所は、この課題に取り組むため、地域と連携しながら積極的に対策を進める役割を担っていると考えています。また、北海道または他都府県での発災に備え、全国ネットワークの支援体制の強化や自治体、関係団体、道民などとの平時からの協働する取り組みも大切です。

【青年会議所運動の効果的な発信】

私は、北海道の発展に向け、多くのパートナーとともに、北海道全域にJC運動の波を広げ、さらにはこの青年会議所を多くの人に認知され共感を得たいと考えています。

北海道地区協議会は、対内外に向けて様々な方法で活動や運動を発信してきましたが、地域や社会において青年会議所の認知度はまだ十分とは言えません。私たちの運動をさらに拡大するためには、外部メディアや関係者の協力を得て、多くの人が青年会議所を知り、魅力的な情報を発信することで、共感と信頼されるブランディングへと発展させることが必要です。

そのために、北海道民に対する意識醸成、問題提起、行動喚起を行うため、運動発信の機会として北海道JCフォーラムを2012年から2019年まで行ってきました。そして、2020年から北海道民の誰もが楽しみながら学びを得られる事業且つ、広域的な運動の展開を目指し、JCフェスティバルと名称を変更して実施してきました。急速に変化する社会や多様性に適応した工夫を凝らした発信をしなければ、北海道民からの共感や信頼を得ることは難しいと感じています。改めて、私たちの運動を誰に届け、誰から共感を得て、市民運動の波を生み出すのか、これまでのJCフェスティバルを検証し、より効果的な形へとアップデートするべきではないでしょうか。

そして、日々の運動はもちろんのこと、我々の運動とともに道内各LOMの運動をメンバーのみならず、メンバーの会社の社員や家族、さらには普段青年会議所の運動に触れる機会のない身近な人々に対しても共感と信頼を生むような広報活動を積み重ねることが必要です。

【持続可能な北海道地区大会】

私は、参画したメンバー、市民、関係主団体のすべての人とともに共感、感動を共有できる大会にしたいと考えています。

北海道地区大会は、唯一、主催と主管が異なります。異なるからこそ、毎年違う地域の魅力や学びが得られる大会となると考えています。過去72回にわたりその時々の社会問題を解決し、北海道を発展させる機会の提供として、北海道地区協議会の運動の成果と大会開催地域の地域性を発信してきました。歴史と伝統を重んじながらも、常に進化し続ける北海道地区大会をどの地域でも主管可能な大会とし、次代へと継承するためにも、成功例の単なる模倣ではなく、開催地のもつ文化や、伝統、歴史的背景を掘り起こし、それらを活かし今後のまちづくりの起点となる大会を構築する必要があります。開催地の地域性を発信、共有し、道民の意識変革と地域の発展を図り、北海道地区協議会が1年間取り組んできた運動の集大成の場とし、メンバー間交流からなる友情の醸成で、北海道地区協議会がもつスケールメリットの意識から帰属意識を向上し、未来へのビジョンを継承することで持続可能な明るい豊かな北海道の創造に寄与できるのではないでしょうか。

【協議会アップデート】

私は、協議会が単なる総合連絡調整機関にとどまらず、道内43LOMから頼られる組織にしたいと考えています。

現状、地区協議会とブロック協議会の役割を正しく理解していない役員や各LOMメンバーが多くいます。各協議会の違いを明確に認知することで、役員の意識や行動が変化し、各LOMとの連携やサポートがより可能になると確信しています。そして、協議会の会議は、道内各地で開催することによって、その土地に訪れ、今まで知り得なかった新たな思想の発展につながります。しかし、北海道は広大であり、会議への移動には時間とリスクが伴うことは事実です。このため、出向者の負荷を軽減し、協議会の運動の最大化を行えるよう組織運営の改善に取り組む必要があります。また、協議会の運営は、各LOMからの付加金と出向者から成り立っています。透明性のある運営を行うことは、協議会の信頼性を維持する上で非常に重要です。

道内各LOMは、会員減少、会員拡大、会員教育、少人数LOMでの事業構築など様々な課題が山積しています。この課題に対して理念共感拡大グランドデザインを軸に各LOMと連携を図り、必要とするサポートを提供し、各LOMの飛躍につなげたいと考えています。

山積する協議会の課題を解決し、協議会のアップデート、そして各LOMのサポート充実につなげたいと考えています。

【結びに】

道内メンバーが心一つに相集い挑戦し、誰もが幸福を感じる未来を願い、持続可能な繁栄できる耀く北海道の未来を創造したい。

青年らしく、大きな希望を描き挑戦し、私たちの行動で耀く北海道の未来を実現しよう。